「トレンドの考古学」をはじめるにあたって

はじめまして、蔦川敬亮です。

1970年にコンサルティングオフィスを起業して以来、これからの市場機会や商機を展望することを仕事にしてきています。この仕事のベースになっているのが消費につながるトレンド探索活動で、そこでわたしが大事にしているのが、街、店、人々の生活や表現活動、風俗を観察するフィールドワークです。その狙いは「未来を示唆する断片」を拾い集めることにあります。つまり「兆し」をとらえることですが、「兆し」とは「既に起きている未来の断片」で、その「兆し」からトレンドを読んでいく。これがわたしのやり方です。

フィールドワークの舞台にしてきたのが東京とニューヨークです。なぜ両都市を選んだのか。確かな根拠があったわけではないのですが、「未来の断片」を生み出す意識や生き方が多様で集積度も高い、都市の中の都市だと直感したからです。振り返ってみると、この直観に間違いはなかったと思います。

トレンド探索を長年続けてきて思うことがあります。それは消費を考える立場にある人々にとって、トレンドを体系的にとらえていることはとても重要な基本となる仕事だということです。トレンドは流れにたとえることができます。流れには源泉があります。源泉にはトレンドを生み出す背後要因にたとえることのできる地下水脈があり、まずはこれを把握しておかねばなりません。そして、源泉に始まる流れは、時間の経過のなかで源泉の異なる様々な流れと合流して大河になり、そしてその大河から新たな支流が生まれ、その支流がまた大河へと成長していきます。また、流れのなかにはやがて枯渇するものもあり、大河のなかにも川幅が狭まっていくものがあります。

昨日までのトレンドを整理できているかどうかがこれからの事業開発、商品開発、業態開発を考えていくうえでの鍵になります。つまり、過去を整理できていることが将来を見通す基盤になります。「トレンドの考古学」と題したこのブログはそんな思いから始めるものです。半世紀を超えてトレンド探索を続けてきているわたしが『トレンドの語部』になって、今につながるトレンドのあれこれをその起源から語っていきます。

次回はその第1回です。