ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
9.1.2006
商業施設に期待したい、利用価値のあるレストランガイド〜ポケット・メニュー

南カリフォルニアのコスタメサにある高級SC、サウス・コースト・プラザを歩いていて、インフォメーションのカウンターの上に置いてある「レストラン・ミニガイド」なるものが目に留まった。それはこのSCに出店している各レストランの特色とメニューを掲載した各店それぞれの印刷物を集めてスタンド型のケースに納めたものである。ケース自体が重厚感のある、質のいいデスクアクセサリーになりそうな木製のもので、そこに印刷物が整然と納められていることもあって、来館者の目に留まりやすく、興味を惹きやすい。それもそのはずで、このケースに配置されている各店の案内はそれぞれ大きさが統一されているのである。大きさは縦4インチ、横2.5インチ、まさにミニガイドであり、これらが縦6段、横7つ、計42店分が配置できるケースに並んでいる。

サウス・コースト・プラザの「レストラン・ミニガイド」。

来館者が自由に手にできるこのミニガイド、サイズはミニであるが、その中には利用者が知りたい情報がきちんと記載されている。つまり、これは折り畳み式になっており、広げると片面が4ページになり、裏表で8ページになる。見開き面にはたいていの場合、前菜、サラダ、アントレ、サイドディッシュを含む全メニューがプライス付きで掲載されている。店内で手渡されるメニューの縮小サイズ版と考えてよい。また、他のページは店内の写真や料理の特色で構成され、裏面には店の場所を示す地図と予約の際の電話番号ならびにウェブサイトのアドレスが記載されている。

クレジットカードよりもわずかに大きいこのレストランガイドリーフレット、実は「ポケットメニュー」と呼ばれる、あるアメリカの企業が制作しているものである。サウス・コースト・プラザの場合、ここに出店しているレストランがこの企業に依頼して制作したポケットメニューを一堂に集め、同企業が作ったチェリーウッド製のケースに並べて配置しているのである。ちなみに、ポケットメニューを制作するには会員になる必要があるのだが、一度会員になれば、この種のガイドリーフレットにつきもののメニューの一部変更に伴う修正はいつでも無料ででき、これが会員店集めの際の決め手になっている。また、自店利用客への配布にとどまらず、サウス・コースト・プラザのように、ポケットメニューがSCでもレストラン利用促進策として活用されるとなると、多くのレストランが会員になるのはよく理解できる。そういった意味では興味深いビジネスでもある。

それはさておき、商業施設のレストランの情報と言えば、たいていが料理のジャンルと特色の紹介までで、具体的なメニューとプライスまでを知ることのできる例は稀である。それに対し、ポケットメニューは「プライス付きメニュー一覧」という、踏み込んだ、実質的で利用価値の高い情報をポケットサイズで提供することで、利用者にとって実にありがたいツールになる。利用者の立場に配慮したソリューション型のサービスとして、日本の百貨店やSCでもレストランガイド作成の際の参考になろう。





 

株式会社ツタガワ・アンド・アソシエーツ

会社プロフィール 業務案内 蔦川敬亮プロフィールプライバシーポリシーお問い合わせ