ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて

1.15.2009
長くつき合いたいと思えるモノを〜買わない時代における消費観

消費低迷が続くと考えられる時代にあって注目してみたい店がある。デザイナーのナガオカケンメイが経営する「D&デパートメント」(東京・九品仏)である。ストアウォッチングの立場から、啓蒙力、提案力のある店として定点観察のひとつにしてきているのであるが、ここは『ロングライフデザイン』を価値尺度に様々なカテゴリーの商品を、年代や新品・中古の垣根を越えて集める店で、家具、生活雑貨から書籍やグリーンに至るまで1,500ものアイテムが集積されている。

『ロングライフデザイン』のMDにはいくつもの切り口を読み取れる。柳宗理のキッチンウエア、野田琺瑯の琺瑯製品、深澤直人の「±0」の家電などに代表されるタイムレス・スタイルのモノ。ホテル、レストラン、病院などで長く使われてきている業務用品や医療用品。また、リサイクル、リユースという切り口も見逃せない。さらには1960年代の製品の中古品や復刻品も。これはこの年代に日本で生み出された商品のなかに『ロングライフデザイン』の尺度にかなうモノが多いという見方に基づくもので、同店では、家具のカリモク、業務用家具のホウトクやコトブキ、陶器のノリタケ、バッグのエースなどと組んで、60年代製品を復刻する活動、「60ビジョン」と取り組んでいる。

「D&デパートメント」。「ニッポン・ビジョン」の展開。

また、ナガオカケンメイは「ニッポン・ビジョン」と名付けた、地域産業による伝統的製品や匠による伝統工芸品を『ロングライフデザイン』の性格を持つ実用品としてとらえていくプロジェクトも立ち上げている。ここでは、例えば、東京都の亀の子だわし、新潟県のステンレスポット、大阪府のブリキバケツ、兵庫県の日の丸扇形マッチ、茨城県の小箒、山形の長文堂なつめ鉄瓶、常滑焼急須、新潟はりみ、京小座布団、ダイイチゴム長靴といったモノが選ばれており、このプロジェクトではこれらのモノを、デザイン性の高さをMD方針にする全国の雑貨店で販売することを推進している。「D&デパートメント」でもこれらをコーナーを割いて展開しており、周囲で展開されている実質性の高い商品となじみながら、それでいて主張もしている。

『ロングライフデザイン』を価値尺度にする「D&デパートメント」には、「長いつき合いのできるモノこそ正しい」という消費についての新しい提案と啓蒙がある。この時代に求められる生活観、消費観ということで考えさせられる店である。





 

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