ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
5.11.2009
ポップカルチャー業態開発の切り口になる

ビームスの開発した新業態、「東京カルチャート」。美意識を刺激する先端的なポイントがどこにあるかを考えるうえで注目に値する事例である。原宿・明治通り沿いにあるビームスの建物の3階を転用する形で開発されたこの店は、日本が生んだマンガやアニメやオモチャ、さらには日本の気鋭のアーティストにも注目しながら、先鋭的・前衛的アートの存在感を持つものを、ビームス流のセンスをもって選び、編集するものである。

小野英樹、ナオミ/サウス、カッズ・ミイダなど若手の新進アーティストによる絵画やシルクスクリーン作品(10万円〜70万円)。1970年代に作られたウルトラマン・シリーズのソフトビニール人形(5,000円〜6,000円前後)。横尾忠則のデザインによる、スカルのモチーフをデザインポイントにした染め付けの皿のセット(6枚組で25,000円)。「ぬいぐるみアーティスト」を名乗る森川まどかによる不思議な生き物のぬいぐるみ(14,000円)や巨大なオブジェ。人気のフィギュアメーカー、M1号の西村祐次による、鮮やかな色彩の塗装が特徴の怪獣フィギュア(5,250円)。ヘルメットなどの立体物へのペイント作品を手がける倉科昌高による、ボウリングのピンにペイントをしたアート(189,000円)。デザインやアートに関する希少な絶版本。

これらは約90uの店内に配置されている商品である作品の一部に過ぎないが、「東京カルチャート」にはビームスが昨年開発したTシャツ専門業態「マンガート・ビームスT」との共通項が感じられる。「マンガート・ビームスT」は、日本が生んだマンガやアニメをアートとして昇華させつつ、これをデザインモチーフとしてTシャツにアレンジして楽しむところにMD(マーチャンダイジング)特性を求めるもので、両者に共通しているのがポップカルチャーで感性の世界を開拓していくという姿勢である。

マンガ、アニメをはじめ、日本人生活者の精神性や感受性が育て上げたポップカルチャーが世界的に評価され、注目されている時代である。そのこともあって、ポップカルチャーは商品企画やMD企画と結びつくことで生活者の感性を揺さぶり、興味や好奇心をかき立てるものになる。そう言えば、ニューヨークの人気繁盛店に「キッドロボット」という、アーティストによる限定版のビニール製の掌サイズのフィギュアを企画・製作・販売する店がある(当サイトの2008年1月10日号参照)が、ここなどはポップカルチャーを売ることで成功している店の好例である。

ポップカルチャーは感度の高さにつながる要素になり、見方を変えると先鋭的なファッション性にもなる。そしてさらにはMD開発や業態開発の切り口にもなる。そんな動きを察知するのである。





 

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