ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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3.1.2006
子供向け料理教室に注目したい

「ABCクッキングスタジオ」。若いミセスやOL層を中心に人気のあるクッキングスクールである。人気の要因は様々あるのだが、そのひとつに、スクールそのものの環境が一見したところオープンキッチンのあるカフェを思わせるオシャレでカジュアルな雰囲気を持っていることがある。また、ファサードが全面ガラスになっていることから、授業風景が通路を行き交う人々からすべて見えるようになっており、新たな受講者獲得のうえで効果を上げている。同時に、閉鎖的なスクールの常識を超えたこの開放的な造りは、これを導入するSC側にとっても得がたい魅力になっている。

この「ABC」の新しい試みとして注目したいのが、子供向け料理教室「ABCキッズ」である。これは4〜12歳の子供を対象にするもので、埼玉県川口市にあるSC、アリオ川口のアリオモール2階にある「ABC」の通路から見て左部分を使用する形で導入されている。クラス編成は幼児クラス(4〜6歳)、小学生クラス(1〜6年生)に分かれ、1クラス8人までの少人数制で、入会金10,500円、月謝(月2回分)は幼児クラス4,725円、小学生クラス5,250円となっている。授業では減農薬野菜など、安全性の高い食材を使用する一方で、料理するだけではなく、食材が栽培されている写真を見せたり、一番おいしい時期や選ぶ時のポイントを教えたり、料理作りという創造的な作業を通じて、生きる基本である「食べる」ことの大切さを楽しく学べる工夫を凝らしている。

料理作りを通して健やかな子供に育てる。そういったことで親の共感を呼ぶのだが、観察してみると、コック帽にコックコート(生徒に無料でレンタルされる)を着て一生懸命料理するかわいらしいわが子の姿をガラス越しに見る親が群がり、この教室には予想を超えた一面があることも読み取れる。つまり、教室がステージになり、あたかも発表会のようなときめきを親にもたらしているのである。実際、カメラを構える親も多いのだが、これに着目して「ABC」では希望者にプロが撮影した写真を製本して渡すサービスも始めている。このように、子供という主語と、「ABC」ならではの開放的な造りが一体になって思わぬ効果を上げているのである。

子供の料理教室にはいろいろな効用を描くことができる。とりわけ、住まいに近い足元のSCではそうである。ただし、そこには「ABC」ならではのスクール作りの独自性が作用していることを忘れてはならない。





 

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