ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
1.10.2008
デコレーション・スウィーツとして「爆発」するカップケーキ

日本でも放映されたアメリカの人気テレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」。ファッションからベビーカーにいたるまで今なお影響を持ち続けるトレンド発信源である(マーケッター必見のドラマ)。そこから生まれた大ヒット商品に、ニューヨークの「マグノリア・ベーカリー」のカップケーキがある。これは一昨年に日本でも公開された映画、「プラダを着た悪魔」にも登場し、そのこともあって、もとは英国発祥の、どちらかと言えば昔懐かしい家庭的で素朴なお菓子であるカップケーキが、アメリカで、日本で、ホットなスウィーツとして関心を集めている。また、この動きを汲み取るように、カップケーキに焦点をあてる専門業態の開発がブームの様相を呈している。

そのひとつがJR東京駅の改札内に開業したエキナカ商業施設、グランスタに登場した「フェアリーケーキ・フェア」。お菓子研究家として女性に人気の高い、いがらしろみのプロデュースによるカップケーキ専門店である。この店のカップケーキの特徴のひとつは、カップケーキの上にほどこされた、フレーバーごとに異なる、それぞれに工夫のあるデコレーションにあり、今ひとつの特徴が、そのどれもが一般にイメージするカップケーキよりも一回り小さいミニチュアサイズとしての愛らしさを持っていることにある。これによってこの店のカップケーキは、女性たちのなかに潜む少女の心を刺激する、おままごとのような楽しさ、かわいらしさを感じさせるものになっている。

「ロリオリ365・バイ・アニバーサリー」のカップケーキ(315円〜504円)。

日本を代表するパティシエの一人、本橋雅人が率いる、シュガークラフトの技を駆使した繊細で装飾的な美しさにあふれたスウィーツを創造することで知られる青山の「アニバーサリー」による新業態、「ロリオリ365・バイ・アニバーサリー」も興味深い。この店でも重要なアイテムとしてクローズアップされているのがカップケーキで、季節のフレーバーや店舗の限定企画品も含めて常時10種類ほどのカップケーキが並ぶ。特色は、ケーキの上に繊細で変化と工夫に富んだ様々なデコレーションがほどこされていることにあり、その装飾性は他をはるかに凌ぐ。それは直径5〜6cmに表現されたミニチュアサイズのデコレーションケーキと表現できるものである。

カップケーキに焦点を当て、クローズアップする動きはアメリカでも見られ、こうしてみると、新しいカップケーキの魅力は、発信元の「マグノリア・ベーカリー」のものもそうだが、「カップ入り」という形態に共通項を持つ新しいデコレーション性を楽しませることにある。それは、既にファッションの分野で体験してきた『デコる』トレンドが、次に食べ物の分野へと広がってきていると見ることもできる。デコレーション・スウィーツのコンセプトはソフトクリームにも新しさをもたらしているが、『装飾遊び』を追い求める動きがスウィーツの世界で刺激創造のテーマになっていることに注目したい。





 

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